あと5分。

まっすぐに生きたいと思っているだけ。

面倒で、面倒な。

 

私は好かれている。

なんかそんな気がする。

 

少しいいなと思う人が自分を好きなんじゃないかと思うのは、殆どが自惚れからくるし大体勘違いでめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど、分かっていながらまたそんな勘違いを私はしているのかもしれない。

 

相手はプロジェクト旅行で一緒になった1年生の男子。学年は下だけど年齢は一緒。

 

旅行中は面白いくらい何もなかったけど、アクティブで頭脳明晰な彼のことはすごくモテるだろうなと思っていた。

 

でももう本当に恋愛はめんどくさい!

この人は私のこと好き?嫌い?いける?いけない?ちょっとしたことで一喜一憂することが本当に本当にしんどい。

 

彼氏がいたらいいなとは思うけれど、そんな推測したり仲を発展させていく期間をすっ飛ばしてなんか勝手に付き合えたら最高だと思う。

 

だからもしいいなって人がいても、どうせダメだしって、好きになるのは絶対やめようって決めてる。

 

今回もそれでいようと思った。

だって同じ専攻同士なんてめちゃくちゃめんどくさいに決まってる。

 

言い訳ばっかりしてしまったけれど、私を「この人私のこと好きなんじゃ?」と自惚れさせ始めたのは、その旅行の終わりの終わり。帰りの飛行機に乗っている時。

 

隣の席になった彼がどんな話の流れだったか、「俺アートばっかり考えてる奴だと思われがちだけど、ちゃんと女の子に興味あるから!」と熱弁を始めた。確かに彼は人一倍アートの知識を持ち、いつも積極的に質問をして自身でイベントすら立ち上げる。恋愛なんかする暇もないくらい、アートで頭を埋め尽くしている人だろうと思っていた。

 

それから1時間半のフライト中ずっと、お互いの過去の恋愛だとか価値観だとかをずっと話していて周りの人は本当に迷惑だったと思う… でもおかげで彼に恋人はいないし、自身いわく全然モテないということを知った。

 

トランジェットで次の飛行機を待つ間、

「次はいつ2年生に会えるかな」

「修了制作で忙しくしてるよね」

「なんか手伝えることがあったら、あれ、手伝うし」

とふと口にする。

今までの彼の感じと違って、ん?と思ったけれど、でもこれくらいは1年生という立場からしたらまだ普通に他の2年生にだって言う内容だし、自惚れちゃいかんいかん!!と心の中の自分をビンタした。

 

だけど帰国して、今日。

学校のイベントで展示や模擬店が並び、彼も展示監視のシフトがあるらしく学校に来ていた。一瞬うちの模擬店に顔を出して、友達に誘われてすぐにどこかに消えていった。

 

なんだ、旅行が終わればこんなもんか。

やっぱり勘違いだったのか、深い傷を負う前に気づけてよかった…。

安堵のような悲しいような気持ちになっていると、

 

「今日何時に帰る予定?」

 

とメッセージが来た。

ここが国外なら、メンバーの予定の確認は当たり前だけれど、待て、ここは国内だぞ?

また自惚れの沼にハマらないように、このメッセージの意味を必死に考える。

 

とりあえず返信をすると

 

「俺今監視で教室にいる。暇だったら来てー」

 

と次のメッセージ。

なんだ、なんなんだろう。アートについて語りたいんだろうか。でも私にそんな知識あまりない。もしかして私なんかしか呼ばなくちゃいけないくらい地獄みたいに暇なんだろうか。いや、普通に何も無くてもメッセージのやりとりをするくらい仲のいい友達として認められたんだろうか。

なんだかもう分からなかった。

 

しばらく考えて、模擬店をすっと抜けて教室に向かった。

 

そういえば完璧に2人だけで話すのは初めてかもしれなかった。

 

そっと横に座ると、彼はびっくりして、自分で呼んでおきながら少し照れているようにも見えた。(でもそれすら自惚れかもしれないし、照れたように話すのが彼の癖なのかもしれない)

 

本当に他愛もない話をしばらくして、その一つ一つの言動にいちいち心の中で言い訳をつけていると、そのうちにクラスの友達が来て作品の話になってしまった。

 

そして結局彼は監視シフトの後、遅くまでうちの模擬店の片付けまで手伝ってくれて帰っていった。

 

 

簡単に書き出してみると、なんだこんなことでしかなかったんだなと今思う。もしかして本当に同い年の日本人だから、親近感を持って接しているだけなのかもしれない。

 

こうして全てに言い訳していると、自分って本当に恋愛に対してびびっているなと感じる。期待すると後が怖い。ここのところそんなのばっかりだったし。

 

 

ああ、分からない、分からない。

でも既にこの関係を推測しようとしてしまっている自分がいる。ああ、やってしまった。

 

これは本当に面倒だぞ。